バイクで聴く音楽

マフラーから吐き出されるエキゾーストノート。
静かなものからアドレナリンに訴えかけるものまでバイクによって方向性は様々ですが、
族車からMVアグスタまで大概のバイクが排気音については相応に気を使っているという事実が示している通り、排気音がバイクの魅力の一つであることに異論はないと思います。
機械と対話しながら人間の到達不可能な運動の領域を疾走するというバイクの楽しみの根源に関わる部分においても、音は機械の様子を知るための重要な要素です。気楽に走る時から目を三角にして走る時まで、バイクの発する音を聞きながら走るのはライディングの基本の一つだと言ってもいいと思います。
ですが、私自身はあまり排気音を聞くことをせず、普段はタンクバッグの中にポータブルMDを放り込み、通常のイヤホンではすぐに耳が痛くなるシステムヘルメットでも長時間使える様に自作したイヤホンでロックやらサントラやら民族音楽やらを聴いてます。
私のRSがノーマルマフラーより明らかに音質のいいササキスポーツクラブのチタンマフラーを装着していても、です。

異論もあるだろうとは思います。ピュアなライディングにステレオなど邪道だとか、マフラーが奏でる音こそ最高のミュージックだとか、音楽は集中力を削いで危険だとか。
でも、いかに疲れの少ないBMWとは言えいつもいつも全神経を集中して走っていてはやっぱり疲れてしまいます。
私にもマフラーから吐き出される排気音に浸って走り続けることこそ至福の瞬間と感じられる時も確かにあるのですが、個人的にはそう感じていられるのはライダーが精神的に余裕がある時に限るのではないかと思います。
ツーリングは最初から最後までハイテンションを保って走れるものではなく、いつも排気音に酔いしれていられるとも限りません。Rシリーズで渋滞にはまって油温計の目盛がどんどん上昇を続けている時にライダーの神経を落ち着かせてくれるのは、排気音よりもクラシックの方が適役ではないかとも思います。基本的に同じような音しか出ないマフラーに対して、音楽だったら準備次第で童謡から軍歌までどんな曲でも聴けることも高ポイントです。
長々と書きましたが、要は何を聴くにしても危険でない範囲で当人が気分良く走れればいいわけで、大抵の場合は排気音よりお気に入りの音楽を聴いている方がキモチヨクなれる私は「ライディングをより楽しむために」走行中に音楽を聴くことを積極的に肯定しています。
ただし、もちろんネックもあります。普通に走っている分にはまず問題ないでしょうが、やはり集中力が多少は低下します。ですから、GPライダーがレース中にウォークマンを聞いているという類の話をついぞ耳にしないのと同様の理由で、本気で飛ばすような走りのお供にはまったく不向きです。
また、もしノリのいい曲などを聴き過ぎて本人のテンションが上がり過ぎでもしたら、人によっては調子に乗って無茶な運転をしかねません(これは自制心で片付きますが)。実際私はここ二度スピード違反で警察に捕まった時には、いずれもお気に入りの曲を聴いて妙にハイテンション気味になっている最中でした(汗)。
ちなみに、音量によってはパトカーや白バイのメガホンの音がかき消され、彼らが何を言っているのかわからないというデメリットもあります。何しろ身をもって体験したからこれは間違いない(^^;)

そんなわけで欠点もありますが、退屈な高速道路とストレスの溜まる渋滞にうんざりされる向きは一度試してみることをお勧めします。
ですが、音楽の好みは人それぞれ。
以前あるライダーから「大音響でド演歌をかけている二台のGL1500に追い越し禁止の区間で前後を挟まれ、もう少しで発狂してしまうかと思った」という体験談を聞かされたことがありますが、そのライダーの音楽的嗜好はさておくとしても何事もはた迷惑にならない程度に留めておくのは社会的弱者であるライダーにとって大事なことかなと。

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