快適性とマゾのバランス

オーナーの人には今更ですが、BMWのオートバイはどれでも極めて優れた快適性を備えています。
比較的柔らかめでダンピングの効いた乗り心地、
空気を切り裂くよりも押しのけることを主目的としたカウリングの優れた防風性、
テレレバーのもたらす無類の安定感にグリップヒーター、
分解してみると言いたいことは山ほど出てくるけど基本的に座り心地の良いシートなどの
様々な要素が盛り込まれた結果として悪天候や気温の低い時期でも疲労度の少ないライディングが可能です。
ですが、それだけに他のバイクと比べると運転中にやることが少なく、
「乗せられている」感じが比較的強いのもまた事実だと思います。

私にはアンチBMWとはいかないまでもドカ以外に見向きもしない知人がいますが、彼にこう言われたことがあります。
「バイクは暑い時は暑い風を浴びながら、寒い時は寒い風に震えながら、自然を感じて走るのが醍醐味じゃないかい?」
「バイク乗る楽しさって、ある意味マゾヒスティックなところがあるでしょ。そんなに快適装備をつけて、楽して走って面白いの?」
彼の言うことも間違ってはいないと思います。
私も若さと勇気で大自然の猛威に立ち向かうようなライディングは嫌いじゃありませんし、
台風の中や雪の中を走り回るのも実際にやってみてそれはそれで楽しいと思いました。
バイクの楽しみの根源的なものの一つに「マゾヒシズム」という言葉は確かにあるとも思います。
しかし。

自動車のヒーターとクーラーを考えてみれば分かる通り、
快適性を高める装備はバイクの悪条件下での使用を誰にも可能にしました。
私が時々顔を出しているイタリアンバイクの専門店だと、
私が雨や雪の日にBMWで乗りつけると常連客たちが
「こんな天気にバイクで来たの?すごい!」「危なくなかった?」などと言ってくれますが、
BMWの走行性と快適性があるから、他のバイクが走れない時でも走りを楽しめているわけです。
峠道やサーキットだったらBMWよりドカの方が面白いだろうしそれはそれで結構なことなんですが、
マゾヒシズムに背を向け、快適性に転んだからこそ得られる楽しみもあると思うんです。
どちらを重視するかはそれぞれ。
でも私は、バイクを楽しむための性能の一つとしても快適性を否定する気にはなれないですね。

ところで前出の友人曰く。
「冬?スキーはするけどバイクには乗らないよ。だって寒いじゃない」
それに私が答えたこと。
「寒い?さっきそう言ったからには我慢して冬でも乗れっ!」

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